資金を減らさないためのリスク管理とロスカットの決め方
目次
「値動きは予想できない」ということを前提にする
リ—マン・ショックで外れた予測
レートの動きを正確に予測できるという人はいないでしょう。
私はトレード歴が長いですが、
為替レートや株価の動きを正確に予測することはできません。
「そろそろ天井(最高値)になるだろう」
「このくらいで下げ止まるだろう」
そう思っていても、そこからさらに上がったり、
下がったりすることはよくあります。
ときには予測をはるかに越えるようなこともあります。
リーマン・ショック(2008年9月)のときもそうでした。
なんとなくですが、日経平均株価の動きを見て、
「1万円くらいで下げ止まるだろう」、
米ドル/円の動きを見て、
「100円か、よほどのことがあっても95円くらいで下げ止まるだろう」
と思いました。
しかし、実際には、日経平均株価は7000円台、
米ドル/円は87円台まで下落。
予測は大きく外れたわけです。
これは、私にかぎったことではありません。
ほとんどの投資家は、投資歴にかかわらず、
値動きを正確に予測することはできないのです。
●値動きはそう箇単にわからない。
●予測を大きく越えた値動きをすることもある。
このことを前提にしてトレードすることが大切です。
それがトレードで勝つコツの1つであり、
また、マーケットで生き残るコツなのです。
リスク管理で資産を守る
損失額が膨らみ続ける最悪の状況
どんなに優れた手法でも、
すべてのトレードで利益を出すことはできません。
損失が出るトレードもあるはずです。
では、建てたポジションに含み損が出た場合、
どのようにすればよいのでしょうか。
「どうせ、すぐにレートが戻るからそのままにしておけばいい」
そう思った人もいることでしょう。
実際、このように含み損が出たポジションを
そのままにしておく人はたくさんいます。
たしかに、レートは上がったり下がったりを繰り返しています。
だから、含み損が出てもそのままにしておけばレートが戻り、
含み損がなくなることもよくあります。
うまくいけば、含み損がなくなるどころか、
含み益が出ることもあるわけです。
たとえば、83円でロングのポジションを建てて、
それが82円まで下がり、1円分の含み損が出たとします。
それでも、イグジットしないで、
そのままにしておけば、レートが83円に戻って含み損がなくなる。
そして、うまくいけば、84、85、86円……というように上がり、
含み益が出るということもあるのです。
しかし、その逆になることもあります。
83円でロングのポジションを建てたあとに82円まで下がった。
先ほどはここから戻りましたが、
今度は戻らず、さらに下落。
81、80、79円・・・・・・というように下落しました。
このままにしておくと、損失額がいくらになるかわかりません。
先述のとおり、
「値動きは簡単にわからない。予測を大きく越えた動きをすることもある」
のですから、損失額がいくらになるのかもわからないということです。
資産を失わないためにやるべきこと
どこまで上がるか、どこまで下がるかわからない。
そんな危ない取引に手を出している。
そのことを理解していない投資家がたくさんいます。
いや、むしろ、ほとんどの人が理解していないでしょう。
みなさんもそうでしょう。
FXでは、たった1回のトレードで、
大きな損失を出してしまうこともあるのです。
実際、1回のトレードで資産のほとんどを失った人はたくさんいます。
FXは簡単に口座を開設でき、
簡単にトレードを始められますが、じつは大変リスクのある取引なのです。
そのことをよく理解したうえで、
資産を失わないためにやるべきことがあります。
それはリスク管理なのです。
ナンピンとはどのような取引なのか
含み損が出たとき、ナンピンをする投資家が多い
建てたポジションに含み損が出たら、
なにもしないのは危険。
リスクが拡大することもあります。
なんらかのアクションをとる必要があります。
その際、ナンピンをする人がたくさんいるようです。
ナンピンとは、
何回かに分けてポジションを建てること。
たとえば、
はじめに85円で1万通貨のロング・ポジションを建てたとします。
その後、レートは84円まで下がりました。
ここでロング・ポジションをもう1万通貨建てます。
そして、さらに下落し、レートが83円になりました。
ここでもロングポジションを1万通貨建てます。
これまでの合計は3万通貨。建値の平均値は84円です。
こういった取引をナンピンといいます。
このようにレートが下がるごとに買い増ししていくのを
「ナンピン買い下がり」
といい、レートが上がるごとに売り増ししていく取引を
「ナンピン売り上がり」といいます。
含み損が出たときに、このような取引をする投資家が多いのです。
ナンピンは建値の平均値を有利にできる
ナンピンをするのには理由があります。
それはナンピンをすることによって、
建値の平均値を有利にできるからです。
前での例では建値の平均値が84円。
現時点のレートは83円ですから、
ここから1円上がれば含み損がなくなります。
もし、
回数を分けないでポジションを建てていたら、どうなったでしょうか。
85円で3万通貨のロング・ポジションを建てていたら、
ここから2円上がらないと含み損がなくならないのです。
たった1円ですが、この差は大きいです。
このようにナンピンをすることで建値の平均値が有利になるのです。
だから、トレーダーはナンピンをするのです。実際、効果はあります。
私は株のトレードですが、
ナンピンによって大きな利益を得たことがあります。
ロングでもショート(カラ売り)でも儲けました。
一時は、これといった手法がなくても、
ナンピンだけで順調に資産を、増やしました。
私以外にも、
株やFXのトレードで、ナンピンによって資産を増やした人はたくさんいます。
とくに、FXトレーダーに多いようです。
通貨の値動きというのは一定の値幅の間を行き来することが多いのです。
たとえば、85円から83円まで下がったが、また85円に戻った。
そして、再び83円まで下がった、
というように、レンジの中を上下に動くことが多いのです。
また、上昇するにしても、下降するにしても、
一方向にずっと動くことはありません。
上がったり下がったりを繰り返しながら、どちらか一方向に動いていきます。
このように、レートが上下に動くことが多いので、
ナンピンをするとうまく利益を出せることが多いのです。
ナンピンのリスクを理解する
ナンピンが裏目に出たらどうなるか?
この例のように、はじめから
「全部で3万通貨。レートが1円下がるごとに1万通貨ずつナンピンする」
と決めていれば、トレード戦略の1つといえるでしょう。
しかし、ほとんどの人は決めていません。
はじめに3万通貨のポジションを建て、
値下がりして含み損が出たから、
仕方なく、もう3万通貨のポジションを建てるというような
ナンピンをします。
そこからさらに下がれば、
もう3万通貨というようにポジションを大きくしていきます。
これでレートが戻れば含み損がなくなり、
うまくいけば含み益が出るでしょう。
しかし、その逆もあるわけです。
先ほどの「このことを前提にしてトレードをすること」
と述べた2つのことを思い出してください。
私は、レートの動きを予測するのは難しい、
レートは予測を大きく越えた動きをする、と述べました
だから、「もう少しで反発する」と思ってナンピンをしても、
その予測を越えて大きく下がることもあるのです。
そうなジションを大きくした分、大きな損失が出てしまいます。
たとえば、
前の例でいえば、
85円、84円、83円でロングのポジションを建ててナンピンをしたとします。
その後、レートが上がれば含み損がなくなるのですが、
逆のこともあり得ます。
レートが83円で下げ止まらず、
さらに下がることもあるわけです。
82円、81円、80円・・・・・・
どこで下げ止まるかということは予測できないのです
もし予測を越えて下がれば、大きな損失が出てしまいます。
実際、私の身近にリーマン・ショックのときにナンピンをして
大きな損失を出した人がいます。
その人は上昇による利益とスワップポイントによる利益で
かなり儲けていたのですが、その儲け分をすべて吐き出し、
さらに大きな損失を出してしまったのです。
大きな損失を出さないためにもナンピンはしない
このようにナンピンをすることで大きなリスクが発生することがあります。
しかし、それでもナンピンをする投資家がたくさんいます。
それは、
「建てたポジションで損失を確定させたくない」
という気持ちからです。
誰でも損をするのは嫌でしょう。
儲けられると思ってエントリーしたのに
損が出るのは受け入れられないという気持ちがあります。
しかも、スプレッドというコストを払っているのですから、
その分がもったいないという気持ちもあります。
だから、ナンピンでなんとかしようと思うのです。
はじめのうちは恐る恐るポジションを増やしていくのですが、
何回かナンピンをして成功すると、
含み損が出たときに、ついやってしまいます。
クセのようになっているトレーダーもいます。
かつて、私もそうでした。
しかし、痛い目にあってからはナンピンをしていません。
また、他の投資家にもすすめていません。
大きな損失を出さないためにも、ナンピンはしないことです。
含み損が出たポジションはロスカットする
スカットとはどのような取引なのか
建てたポジションに含み損が出た場合、
そのままにしておくのはダメ。
では、どうすればよいのでしょうか。
それはロスカットです。
ロスカットとは損切りのこと。
損失が出ているポジションを決済し、損失額を確定させることをいいます。
たとえば、84.50円でロングのポジションを建てたとします。
その後、レート が下がり、84.35円になりました。
ここでポジションを売って決済します。
損失は15pips分(15銭)です。
勝っているトレーダーはロスカットが上手い
このように決済することで、損失額をコントロールするのです。
自分が受け入れられる損失分だけ受け入れる。
自分が受け入れられる損失分を超えそうになったら、決済するわけです。
ロスカットをすれば、そのあとにレートがどんなに下がっても、
すでにポジションを持っていないので
損益には関係ありません(損失が拡大することはありません)。
FXでも株でも同じですが、
短期スパンのトレードで長期間にわたってコンスタントに儲けている人は
ロスカットが上手です。
というよりも、ロスカットができて当たり前。
ロスカットがきちんとできるから、
長期間にわたって利益を出しつづけることができるのです。
もちろん、私も含み損が出たポジションはロスカットしています。
以前は勝ちへのこだわりが強すぎて、
なかなか決済できませんでしたが、最近ではなにも考えず、
ほとんど反射的に注文を出してロスカットしています。
ロスカットはトレードの経費
ロスカットするについて、
「負けを認める行為」
「エントリーの失敗を認める行為」
というような考え方をしてしまうと、やりにくくなってしまいます。
そうではなく、「経費」と考えましょう。
トレードでは勝ったり、負けたりを繰り返します
。とうぜん、損失が出るときもあるわけです。
トレードをするかぎり、この負け分は絶対に発生するわけですから、
その損失分をトレードにかかる経費と考えるのです。
スプレッドとしてかかる経費と同じようなものです。
そうすれば、負けを認めると考えるよりも、
ロスカットがしやすくなります。
ロスカットのタイミングを決めておく
ロスカットのタイミングは自分で決める
では、どのタイミングでロスカットすればよいのか。
これについては、トレーダーによってことなります。
たとえば、同じスキャルピングでも、
5pipsを狙うトレードをしている人と
15pipsを狙うトレードをしている人では取れるリスクがことなるからです。
5 pipsを狙うようなトレードをしている人は、
小さい値幅でロスカットしなければなりません。
15pipsを狙うトレードをしている人は、
それほど小さな値幅でなくてもいいでしょう。
また、高レバレッジでトレードをしている人と
低レバレッジでトレードをしている人でも、
取れるリスクがことなります。
高レバレッジでトレードしている人は、
小さな値幅でロスカットしなければなりません。
低レバレッジでトレードしている人は、
それほど小さな値幅でなくてもよいわけです。
このように、各自の条件によって、取れるリスクがことなるので、
ロスカットのタイミングについては、自分で考えて決めなければなりません。
6つのタイミングの決め方
一般的にロスカットのタイミングは、以下の6つのどれかで決めます。
1.値幅(含み損のpips)
2.金額(含み損の額)
3.騰落率(建値からの騰落率)
4.テクニカル指標
5. チャートパターン(チャートの形)
6. 相場の雰囲気(経験によるカン)
値幅で決める場合は、
「建値から何pips分の含み損が出たらロスカットする」
というようにします。
たとえば、
「建値から5pips下がったらロスカット」
「建値から10pips上がったらロスカット」
というように決めるわけです。
金額で決める場合は、
「含み損がいくらになったらロスカットする」
というようにします。
たとえば、
「含み損が3万円になったらロスカット」
「含み損が10万円になったらロスカット」
というように決めるわけです。
騰落率で決める場合は、
「建値に対して何パーセント動いたらロスカットする」
というようにします。
たとえば、
「建値から0.3パーセント下がったらロスカット」
「建値から0.5パーセント上がったらロスカット」
というように決めるわけです。
テクニカル指標で決める場合は、数値や形で決めます。
たとえば、
「ストキャスティクスの数値が20パーセントを割ったら」
「センターバンドが上向きになったら」
というように決めるわけです。
チャート・パターンで決める場合は、
チャートの形や高値・安値をポイントにして決めます。
たとえば、
「ダブルトップになったらロスカット」
「この高値を上抜けしたらロスカット」
というように決めるわけです。
これについてはあとで詳しく述べます。
相場の雰囲気によって決める場合は、相場の変化を捉えて決めます。
たとえば、
「買いがつづかないようだからロスカット」
というように決めるわけです。
とくに根拠がない場合もあります。
カンに頼るところが大きいのですが、
なぜか勝っているレーダーの多くは、
この「雰囲気」によるロスカットをしてしています。
トレードがうまくなるまでは値幅か金額でロスカット
ほとんどのトレーダーは
値幅か金額でロスカットのタイミングを決めているようです。
タイミングがわかりやすいからでしょう。
騰落率で決めている人はあまりいません。
株トレードでは多いのですが、
FXではレートのケタが多いので計算が面倒だからでしょう。
とくにスキャルピングでは、
エントリーしてからイグジットまでの時間が短いので、
細かな計算をしている余裕がありません。
チャート・パターンで決めている人は
テクニカルなトレードをしている人に多いです。
私がすすめるのは、値幅か金額です。
そして、トレードが少し上達したら
チャート・パターンによるロスカットも試してみてください。
コンスタントに利益を出せるようになったら、
雰囲気によって決めてもいいでしょう。
トレードが上達したらやってみるロスカット
テクニカル指標でロスカットのタイミングを決める
テクニカル指標を使って、ロスカットを決めることもできます。
どのテクニカル指標でもよいのですが、
一目でタイミングを見極められるものがよいでしょう。
おすすめするのは、
ボリンジャーバンドの土1σを目安にする方法です。
エントリー後、レートが土σを抜けたら、その時点でロスカットします。
⚫ロンクポジションの場合……-1σを下抜けしたら
⚫ショートポジションの場合……+1 σを上抜けしたら
チャートの形でロスカットのタイミングを決める
次に、チャート・パターンで
ロスカットのタイミングを決めるやり方について説明しましょう。
ロング・ポジションとショート・ポジションによって
ポイントはちがいますが、考え方は同じです。
ロングの場合はレートがポイントを割ったら、
ショートの場合はポイントを抜けたらロスカットします。
ロング・ポジションの場合
1 . 直近の安値を割ったら
2. ダフルトップ(またはトリプルトップ)ができたら
3.三角形(トライアングルやフラック)の鋭角を下に抜けたら
4. レンジ(ポックス)を下に抜けたら
基本は直近の安値によるロスカットです。
エントリーする直前にできた安値を割ったら、
その時点でロスカットします
(ローソク足の終値が確定するのを待たずに、
レートが安値を割ったらすぐにロスカット)。
ダブルトップやトリプルトップによるロスカットは、
この手法によるスキャルピングでは少ないです。
ただ、ダブルトップやトリプルトップを
意識するトレーダーは多いので、このパターンができると,
さらに大きく下落する確率が高くなります。
注意してください。
三角形やレンジの下抜けはけっこうあります。
このパターンも意識しているトレーダーが多いのです。
そのため、パターンができると、さらに下がる確率が高くなります。
早めにロスカットしましょう。
ショートポジションの場合
1. 直近の高値を抜けたら
2. タブルボトム(またはトリプルボトム)ができたら
3. 三角形の説角を上に抜けたら
4. レンジを上に抜けたら
ロング・ポジションの場合と同様に、
碁本は直近の高値を上抜けしたら、
終値の確定を待たずにロスカットします。
ダブルボトム(W型)や
トリプルボトム(逆三尊)でロスカットするケースは少ないです。
一方、
三角形やレンジの上抜けでロスカットするケースは多くあります。
以上がリスク管理についての説明です。
実際のトレードでは、
どこでロスカットするのかと
いうことをじっくり考えている時間がないこともあります。
エントリーしたあとすぐに、急騰や急落することもあります。
「どこでロスカットしようか」と考えている間に、
レートがどんどん動くので、
判断の遅れが損失の拡大に繋がることもあるのです。
だから、ロスカットのタイミングは反射的に決めます。
チャートの形を一瞬見ただけで、
「ここで(ロスカットする)」と決められるようになる必要があります。